物撮りにはトレーシングペーパーがいいらしい。
そんな噂を目にして幾年月。
この度、撮影機材を新調したタイミングで、ついにトレペへの挑戦を決意。
先に結論を書いておくと、噂は本当でした。
トレーシングペーパーの使い方から、ほかのアクセサリーとの比較結果まで簡単にまとめました。
トレーシングペーパーの使い方
購入したのはサンテックのディフュージョントレーシングペーパーという商品。
大きさは1100mm×10mで価格は1,430円でした。
トレーシングペーパーは透写紙(とうしゃし)ともいわれて、イラストや図形などの転写にも使われています。
サイズや厚さなどさまざまな種類が販売されていますが、撮影用に使うならロールタイプがお得。
汚れたら気になる部分だけ捨てればいいですし、小さいサイズが必要になればカットすればOK。
小物類の撮影ならクッキングシートでも代用できるかも。
グリップヘッドの取り付け
ロールタイプのトレーシングペーパーを物撮りで使うには、何かしら固定する道具が必要です。
専用の道具を持っていなかったので、AVENGERというメーカーのグリップヘッドを購入しました。
ライトスタンドなどの先端に取り付けて使う機材です。
今回は撮影場所の都合で、背景スタンドの先端に装着。
長めのスピゴットがあると便利だと思います。
グリップヘッドの価格はAmazonで3,379円。
安いものなら1,500円くらいで買えますが、倒れたりすると危ないのでまともそうなものを選びました。
トレペ用ポールの取り付け
グリップヘッドにポールを取り付けます。
購入したのはTOKISTARのトレーシングペーパーポール(TS-909-AC)という商品で、2,516円でした。
いってしまえばただの棒ですが、軽くて丈夫な素材でできています。
ポールを固定した状態がこちら。
ポール自体はきっちり固定できていますが、物理学者でなくとも不安定で危険な状態だと理解できます。
ライトスタンドを使用する場合、ポールの向きとスタンドの脚の向きを揃えないと簡単に倒れるので要注意。
一体型の方がよかったかも
今回、グリップヘッドとポールを別々で購入したのですが、後で調べたら一体型の商品がいくつかありました。
「グリップアーム」や「ディフューザーアーム」で検索すると出てくるので、手軽さを優先するなら一体型がおすすめです。
そもそもトレペを固定できればなんでもいいので、衣装ハンガーとかでも代用できそう。
トレペを必要な分だけ垂らす
ポールを固定出来たら、トレーシングペーパーを通して必要な分だけ垂らします。
グリップヘッドの固定が甘いと、トレペの重みでポールが傾くので注意です。
重みに耐えられないときは、必要な量だけトレペをカットして洗濯ばさみなどでポールに固定しましょう。
被写体とトレペ、ストロボの位置関係はこんな感じ。
それぞれの位置や角度によって光の当たり方が変わるので、あくまでイメージです。
物撮りでディフューズ効果を検証
実際に物撮りでトレーシングペーパーの効果を検証してみます。
ちがいがわかるようにアンブレラやソフトボックスなど、ほかのアクセサリーも試しました。
撮影条件としてホワイトバランスと露出は固定、RAWで撮影したものをlightroomに取り込んでそのまま現像しています。
また、レフ板の有無でそれぞれ2パターン撮影しました。
使用しているレフ板は物撮り用に自作したものです。
ストロボそのまま直射
まずはアクセサリー類を使わず、ストロボを被写体に向けてシンプルに直射します。
使用したストロボはGodoxのAD200Proで、フラッシュチューブヘッドを選択。
被写体はメル氏です。
いわゆる「フラッシュをあてた」というのが丸わかりの写真です。
光が固くて影もくっきり出ているため、まるでホラー映画のよう。
AD200Proについては以下の記事にまとめているので、気になる方は合わせてご覧ください。
トレペ(近距離発光)
この記事の本題であるトレーシングペーパーの出番です。
まずはトレペのすぐそばでストロボを発光させてみました。
直射と比べると柔らかい光になったものの、まだまだ固い印象です。
トレペ(遠距離発光)
続いてトレペからストロボをできるだけ離して発光させました。
ストロボの距離が離れたこともあって、発光量そのままだと暗い写真になってしまいました。
ただ、光は大幅に柔らかくなっています。
ストロボの発光量を上げると、程よい明るさになりました。
くっきり映っていた影もぼんやりとなって優しい印象に。
胸やお腹の部分を見ると、白飛びしない程度にハイライトも出ています。
光の角度を調整してLightroomで現像すれば、いい感じに仕上がりそうです。
ソフトボックス
トレーシングペーパーを片付けて、ソフトボックスの効果も試してみました。
使ったのはCactusのCB60というソフトボックスで、60×60cmのホワイトタイプ。
光の当たり方はソフトですが、影は濃いめ。
直射より柔らかくて、トレペよりは固めといった印象。
ソフトボックスは片付けが面倒くさいので、あんまり好きじゃない。
ソフトボックス+グリッド
先ほどのソフトボックスにグリッド(あみあみの部分)を装着してテスト。
光の拡散がグッと抑えられて、メル氏だけが照らされています。
背景を暗くしたいときなどに使えそう。
グリッドまで装着すると、片付けはますます面倒くさくなります。
ホワイトアンブレラ
ソフトボックスを試すならアンブレラも試さないと気が済みません。
使ったのは43インチのホワイトアンブレラ。
傘の内側に向けてストロボを発光させて、光を反射させて使うタイプ。
遠距離で発光させたトレーシングペーパーより光が柔らかくなりました。
胸やお腹のハイライトも消えて、悪く言えばのっぺりとした印象。
ツヤ感を出したくないときはアンブレラがよさそう。
ホワイトアンブレラにトレーシングペーパーを組み合わせて、さらに光を柔らかくする方法もありますが、6条の部屋に設置するのは少々厳しいです。
アンブレラは傘を閉じるだけ、片付けが楽なので好き。
トランスルーセントアンブレラ
最後にトランスルーセントアンブレラも試しました。
サイズはホワイトアンブレラと同じく43インチですが、こちらは光を反射させるのではなく、透過させて使うタイプ。
コンビニに売ってる乳白色の傘でも代用できそう。
原理としてはトレペと似ています。
ホワイトアンブレラとかなり似た仕上がりですが、ハイライトがわずかに強めに出ています。
トレペとホワイトアンブレラの中間、といった印象です。
これはこれでアリですね。
自然光でトレペの効果を検証
続いて自然光での撮影でトレペの効果を検証してみました。
ストロボがなくたって、太陽の光さえあれば撮影はできます。
とはいえ太陽光は秒単位で変化するため、難易度はストロボより高め。
雲が多い日はとくに、時間との勝負になってきます。
直射日光
まずは窓からの直射日光で撮影しました。
ストロボの直射にそっくりな強い光ががっつり当たっています。
写真左下、メル氏の影もくっきり出ていますね。
よく晴れた日に窓の近くで撮れば、ストロボなんて面倒なものはいりません。
レースカーテン
続いてレースカーテンを閉めた状態でテスト。
カメラの露出はなにも変えていません。
大幅に光が柔らかくなりました。
ストロボや各種アクセサリーを使わずとも、ここまで柔らかい光を作れるのはお得。
ただ、床を見てもらうとわかるように、光がマダラで一定ではないことと、レースカーテンによっては柄も反映されてしまうでしょう。
トレーシングペーパー
最後にトレーシングペーパーを試します。
機材のセッティングが面倒で、右手でトレペを持ちつつ、左手でシャッターを切りました。
養生テープやパーマセルテープなど、粘着跡が残りにくいテープで窓にトレペを張り付けてしまうのもよさそうです。
レースカーテンより光がグンと柔らかくなりました。
光が均一になって、メル氏の影がぼんやりと溶けるようになっているのも特徴的。
背景やレフ版などもきちんと組めば、それなりの写真が撮れそう。
アンブレラやソフトボックスは自然光下の撮影だとさっぱり役立ちませんが、トレーシングペーパーは幅広い用途で使えて便利。
汎用性の高さが素晴らしいです。
柔らかい光で撮るならトレペ
トレーシングペーパーをはじめて使いましたが、なかなか便利ですね。
柔らかい光の中にもハイライトを程よく残せて、物撮りで使う場面が増えそう。
ストロボとトレペの位置関係で質感を変えられるのも面白い。
ソフトボックスやアンブレラなど、使用するアクセサリーによって色温度がかなり変化することも学べました。
撮りたいイメージに合わせて、トレペも積極的に使っていきます。