ポートレートを撮影するとき、どのレンズを使うことが多いでしょうか。標準レンズと言われる50mm?ポートレートに最適とも言われる85mm?背景をボカすことを考えると中望遠レンズの方が扱いやすいのですが、程よく広角の35mmもポートレート撮影との相性は抜群です。
2年前、初めて参加した撮影会で、当時購入したばかりだったAF-S NIKKOR 35mm f/1.8G EDを使って数カット撮影してみたのです。軽くて明るい万能なレンズで気に入っていたのですが、ポートレートの撮影を通じて、ますますこのレンズが好きになりました。
35mmはポートレートとも相性抜群
人によっては35mmを標準レンズを呼ぶくらい、35mmは万能なレンズだと感じています。様々な場面で活躍してくれるレンズですが、ポートレートとの相性も抜群です。
スタジオや室内の撮影で35mmは重宝する
これまで人物撮影ではAF-S NIKKOR 85mm f/1.8Gを使うことが多かったので、初めて35mmでポートレートを撮ろうとしたときは画角の違いに戸惑いました。85mmと35mmとでは撮れる画が全く別物。
スタジオなどの室内撮影だと、特に85mmのレンズを使用していた場合、それなりの広さがないと立ち姿や全身の撮影は難しかったのですが、35mmならモデルさんから少し離れるだけで全身を撮れます。
遠近感を活かして撮る楽しみ
35mmのレンズにはパースペクティブ(遠近感)を活かして撮る楽しさがあります。レンズによるパースペクティブの違いについては、ニコンのサイトに詳しい説明が記載されていたので一部を抜粋して引用します。
遠近感(パースペクティブ)とは、「近くのものは大きく、遠くのものは小さく見える」というものです。広角レンズは画角が広いため、近くのものと遠くのものでは写る大きさが大きく変わります。 つまり「近くのものはより大きく、遠くのものはより小さく」写ります。
被写体とカメラの距離を変えれば、被写体を同じ大きさに写すことができますが、背景の写り方は変わってきます。 広角レンズでは背景が広く写り、遠近感が強調されます。
85mmなどの中望遠レンズで撮影すると、背景が圧縮されて遠近感をあまり感じられない写真になります。それはそれで中望遠レンズを使うことの面白さなのですが。
レンズが広角になればなるほど、パースペクティブを強調した写真を撮れますが、28mm以下の超広角域になると、広角レンズ特有のゆがみも大きくなってくるので扱いが難しいです。
35mmは超広角レンズほど周辺がゆがむことはないので(多少のゆがみは生じますが)軽快にシャッターを切れるのも気に入っているポイントです。
背景をボカしやすい、ボカしにくいという点だけではなく、背景をどのように(どれくらい)取り入れて作品としてのポートレートを仕上げるか、という点を考えてレンズを選ぶのが大切ですね。
35mmは寄らないとボケない
一般的に広角レンズは背景をボカしづらいと言われています。確かにその通りなのですが、35mmの場合、十分な広さがある場所でモデルさんに近づいて撮影すれば、背景をてろってろにボカすこともできます。
ただ、背景を取り入れながら撮れるところが35mmの魅力でもあるので、背景をボカしすぎるのは35mmの良さを潰してしまいます。がっつり背景をボカしたいときは最初から中望遠レンズを使いましょう。
35mmでバストアップを撮影する場合、モデルさんにかなり近い距離から撮影することになります。きちんと測ったわけではありませんが、モデルさんとの距離が数十センチ程度の場所から撮影しています。
初めてお会いしたモデルさんを撮影するときは、ある程度時間が経って、十分に関係性を築けてからの方が良さそうです。
新品で購入可能な35mm単焦点レンズを徹底比較
現状、新品で入手可能な35mm単焦点レンズを簡単に整理してみました。記載している最安値はこの記事を更新した当時の金額です。レンズの価格は日々変動するものなので参考程度にお考えください。
ニコン、キャノンから販売されている35mmレンズ
まずは主要2大メーカーのレンズから。いずれもフルサイズ対応のものをピックアップしています。
名称 | AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED | AF-S NIKKOR 35mm f/1.4G | EF35mm F2 IS USM | EF35mm F1.4L II USM |
---|---|---|---|---|
メーカー | ニコン | ニコン | キヤノン | キヤノン |
開放F値 | F1.8 | F1.4 | F2 | F1.4 |
レンズ構成 | 8群11枚 | 7群10枚 | 8群10枚 | 11群14枚 |
最短撮影距離 | 25cm | 30cm | 24cm | 28cm |
重量 | 305g | 600g | 335g | 760g |
最安値 | 59,480円 | 189,120円 | 55,240円 | 208,800円 |
シグマやタムロン、サードパーティ製レンズ
続いてはサードパーティー製の35mmレンズ。カールツァイスのレンズはいずれもマニュアルフォーカスのみとなっています。
名称 | 35mm F1.4 DG HSM | SP 35mm F/1.8 Di VC USD | Distagon T* 2/35 | Milvus 2/35 |
---|---|---|---|---|
メーカー | シグマ | タムロン | カールツァイス | カールツァイス |
開放F値 | F1.4 | F1.8 | F2 | F2 |
レンズ構成 | 11群13枚 | 9群10枚 | 7群9枚 | 7群9枚 |
最短撮影距離 | 30cm | 20cm | 30cm | 30cm |
重量 | 665g | 450g | 510g | 649g |
最安値 | 77,900円 | 65,800円 | 98,546円 | 110,803円 |
ニコンとキヤノンの35mm f/1.4のレンズは価格がとんでもないことになっています…量販店で買うことを考えると、記載金額から数万円は確実に高くなります。
レンズは価格と性能がおおよそ比例しますが、描写に関しては好き嫌いの世界なので、高ければいいというものでもありません。カリカリ描写のシグマや、柔らかい描写で手振れ補正も搭載したタムロン、AF非搭載でも高コントラストなカールツァイス。
AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G EDというレンズ
私が気に入って使っているニコンのAF-S NIKKOR 35mm f/1.8G EDというレンズ。2014年に発売された比較的新しいレンズで、その年の価格.comプロダクトアワード銀賞にも選ばれていました。
軽くて明るいという点に加えて、最短撮影距離が25cmと被写体に寄れるという点もこのレンズの魅力。ポートレート撮影で最短撮影距離まで近づくことは多くないと思いますが、例えばモデルさんの瞳をクローズアップしたいときなどに便利ですね。
描写については素直でまっすぐと言いましょうか、悪く言うと強い個性は感じられません。絞り開放付近で撮れば柔らかく、絞っていけばシャープさが増していくという、なんとも当たり障りのない表現が、このレンズにはぴったり当てはまります。
レンズの描写に個性を求めていくなら、値段が倍以上に跳ね上がるAF-S NIKKOR 35mm f/1.4Gだったり、カリカリに解像するといわれているシグマのartライン、35mm F1.4 DG HSMを買えということですね。
タムロンのSP 35mm F/1.8 Di VC USDも柔らかい描写で評価が高いみたいですね。
どのレンズを買おうか悩んでしまう場合、ニコンユーザーであれば、まずは素直な描写で価格も現実的なAF-S NIKKOR 35mm f/1.8G EDから使ってみるのをおすすめします。
まとめ 35mmは1本持っておいて損はなし
ポートレートを撮影するなら、35mmの単焦点レンズは1本持っておいて決して損はしません。標準域のズームレンズを1本持っていると、焦点距離が重なるため敬遠される方も多いのかもですが、散々言及されているようにズームレンズと単焦点レンズの描写は別世界です。
また、35mmの単焦点レンズは各社から販売されていて、好みの描写に合わせて選べるのも魅力です。もちろんお財布と相談という大前提があるのですが。私もお財布が許すなら各メーカーの35mmを全部買って試してみたいです。(妻に○されます)
その場の空気感や、背景を程よく取り入れつつ、遠近感も活かしたポートレートの作品を仕上げていきたい、という方は35mm単焦点レンズをレンズラインナップに加えてみてはいかがでしょうか。
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